本ページでわかること

  • 個人情報保護法と次世代医療基盤法の差異
  • 医療データを取得/提供する場合の法律構成が多数あること
  • 医療データを取得/提供する法律構成ごとのメリットデメリット

医療データの利活用は、個人情報保護法と次世代医療基盤法のどちらを適用させるか選択することができます。個人情報保護法と次世代医療基盤法の差異は何なのか、本人同意なく医療情報を取得・提供する方法それぞれのメリットデメリットについて整理します。

本ページの位置づけ

本人同意なく医療情報を取得・提供する方法

次世代医療基盤法に限られず、個人情報保護法に基づくことも可能。自由に選択可能。

次世代医療基盤法と個人情報保護法の法律比較

個人情報保護法次世代医療基盤法
正式名称個人情報の保護に関する法律
eGov
医療分野の研究開発に資するための匿名加工医療情報及び仮名加工医療情報に関する法律
eGov
種類一般法特別法
適用特別法適用されない場合、個人情報等を取り扱う以上必ず適用自分の希望次第で、適用せずに、個人情報保護法に基づくこともできる(除、作成事業者等)
メリット・様々な構成がある
・手続が軽い場合も
・金銭コストが軽い場合も
・作成事業者に責任が寄り、データ提供者や利活用者の責任が比較的低減される
・倫理審査不要
・プライバシーリスクが低い
デメリット・大臣認定のような外部から見た客観的仕組みがないため、レピュテーションリスク等有
・違法事業者、不適切事業者を自分で見抜かないといけない
・手続が重い場合も
・一定の金銭コストが生じる場合も
匿名化匿名加工情報匿名加工医療情報
仮名化仮名加工情報仮名加工医療情報
官民差有(特に、匿名や仮名を官は使いにくいので要注意)
倫理審査基本的には要不要
倫理指針適用有/無双方有/無双方
同意有/無双方
拒否権無(オプトアウト不可)
大臣認定有/無双方
カバー範囲広い研究開発用
GL等「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」その他のガイドラインあり
PPCサイト
ガイドラインあり
内閣府サイト

法的構成の選択肢

  • 匿名化データで良い
    • →匿名加工医療情報(次世代医療基盤法)
      • 主なメリット:作成事業者に責任が寄り、データ提供者や利活用者の責任が比較的低減される。倫理審査不要。大規模データに強い。
      • 主なデメリット:手続・金銭コスト。
    • →匿名加工情報(個人情報保護法)
      • 主なメリット:手続が簡易。
      • 主なデメリット:違法リスク・責任(適切に匿名加工されているか等)。
  • 匿名加工データではNGだが、生データまでは不要
    • →仮名加工医療情報(次世代医療基盤法)
      • 主なメリット:レピュテーションリスクを低減できる。倫理審査不要。大規模データに強い。
      • 主なデメリット:大臣認定要。
    • →仮名加工情報(個人情報保護法)
      • 主なメリット:手続が比較的簡易。
      • 主なデメリット:違法リスク・責任(当初の利用目的の範囲内か等)。
  • 生データが必要、又は上記方法以外が良い
    • →学術研究(個人情報保護法)
      • 主なメリット:大学病院等が慣れている手続。
      • 主なデメリット:違法リスク・責任(学術研究構成が当事者全員の個人情報保護法適法化根拠とならない等)。
    • →公衆衛生向上(個人情報保護法)
      • 主なメリット:手続が簡易。
      • 主なデメリット:違法リスク・責任(同意困難性等)。
  • 他の手法
    • →行政機関等匿名加工情報(個人情報保護法)
      • 主なメリット:独立行政法人等が持つデータであれば、法律の条件を満たしていれば独立行政法人等は基本的には拒否できない。
      • 主なデメリット:対象外データの可能性。
    • →生命・身体保護(個人情報保護法)
      • 主なメリット:手続が比較的簡易。
      • 主なデメリット:違法リスク・責任(要件該当性等)。
    • →委託(個人情報保護法)
      • 主なメリット:手続が比較的簡易。
      • 主なデメリット:違法リスク・責任(委託外、識別リスク等)。
    • →2026年改正施行後のAI統計特例(個人情報保護法)

図解

方法提供する情報の状態従うべき法律等
匿名/仮名加工情報 (民・官)〇匿名加工された情報 ×生の医療情報個人情報保護法
•医療情報を保有する側で匿名加工し、匿名加工情報/仮名加工情報/行政機関等匿名加工情報の手続に則る
•医療情報の匿名/仮名加工を、非大臣認定事業者に委託することもできるが、匿名/仮名加工が不十分な場合等の責任は、③よりも医療情報を保有する側に残る。
•個人情報保護法の仮名加工情報の場合、第三者提供不可
学術研究〇生の医療情報
〇氏名等を削除した医療情報
〇匿名/仮名加工された情報
•個人情報保護法
•人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針等
•学術研究のために研究機関等に提供する
•人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針の手続を行う
•従来は個人情報保護法は適用除外(対象外)とできたが、令和4年春以降個人情報保護法が適用(一般の民間事業者より目的外利用・第三者提供等が規制緩和されてはいる)
匿名/仮名加工医療情報 (民・官)〇生の医療情報
〇氏名等を削除した医療情報
〇匿名/仮名加工された情報
次世代医療基盤法
•生の医療情報を大臣認定事業者に提供し、大臣認定事業者にて加工し外部提供する

方法別メリット(提供)

方法メリットデメリット
匿名加工情報/ 行政機関等匿名加工情報•加工を外部事業者任せにしないので自身の医療情報をきちんと管理できる
•本人は拒否できないため提供後の運用が容易
•匿名加工情報を外部提供する際の料金が病院等に直接収められる
•加工を外部委託する場合、非大臣認定事業者でも可
•加工が難しい
•加工作業は外部委託できるが、匿名加工が不十分な場合等の責任は、③よりも医療情報を保有する側に残る
•情報を取得する側は生の医療情報は受け取れず、匿名加工された情報しか受け取れないため、目的を達成できない可能性がある
学術研究•生の医療情報のままでも提供可•学術研究目的等に限られる
•学術研究機関等に限定される場合も多い
匿名/仮名加工医療情報 •加工は大臣認定事業者が行うので、医療情報を保有する側の負荷が低い
•匿名加工が不十分な場合等の医療情報を保有する側の責任が軽い
•情報を取得する側は生の医療情報は受け取れず、匿名加工された情報しか受け取れないため、目的を達成できない可能性があったが、2023年改正で仮名加工医療情報も受け取れるように。

方法別メリット(取得)

匿名加工と学術研究

方法メリットデメリット
匿名加工情報/行政機関等匿名加工情報•必要とするデータをピンポイントで取得できる(例、A病院データ、B保険者データ)
•独立行政法人等が持つデータであれば、法律の条件を満たしていれば独立行政法人等は基本的には拒否できない
•医療情報を持つ組織から、対応を渋られる可能性も
•幅広なデータは取得できない可能性も
•情報を取得する側は生の医療情報は受け取れず、匿名加工された情報しか受け取れないため、目的を達成できない可能性がある
学術研究•生の医療情報のままでも取得可•学術研究目的等に限られる
•学術研究機関等に限定される場合も多い
匿名加工医療情報•さまざまなデータを取得できる可能性(例、A病院データに限らず、〇疾患データ50万件等)•情報を取得する側は生の医療情報は受け取れず、匿名加工された情報しか受け取れないため、目的を達成できない可能性がある。2023年改正で仮名加工医療情報が受け取れるようになったが、仮名加工の場合、受け取る側に大臣認定が必要。
•次世代医療基盤法に参加している病院等のデータしか取得できない

仮名加工医療情報/仮名加工情報は都合により割愛。

匿名/仮名比較

匿名加工情報の比較

名称共通点相違点
匿名加工医療情報
←次世代医療基盤法 
•個人情報保護/
プライバシー権保護とデータ活用を両立する仕組み
•匿名加工して誰の情報かわからなくする
•加工基準は法定されており、その加工基準自体は左分類にかかわらずすべて同様
【対象】医療情報に限られる
【手続】次世代医療基盤法上の手続が必要(拒否機会の保障等) 【拒否】本人は拒否できる
匿名加工情報
←個人情報保護法第4章
【対象】医療情報に限られない個人情報全般
【手続】個人情報保護法上の手続が必要(公表・明示等)
【拒否】本人は拒否できない
【対象】医療情報に限られないが、公的機関の持つ個人情報が対象で、対象外となる個人情報の範囲もある程度広い
【手続】手続に手間と時間を要する
【拒否】本人は拒否できない
【その他】令和3年個人情報保護法改正により、非識別加工情報から行政機関等匿名加工情報に。但し、全自治体で対応するものではない。
行政機関等匿名加工情報
←個人情報保護法第5章

仮名加工情報の比較

名称共通点相違点
仮名加工医療情報
←次世代医療基盤法 
•個人情報保護/
プライバシー権保護とデータ活用を両立する仕組み
•仮名加工して概ね誰の情報かわからなくする
•加工基準は法定されており、その加工基準自体は左分類にかかわらずすべて同様
【対象】医療情報に限られる
【手続】次世代医療基盤法上の手続が必要
(拒否機会の保障等)
【拒否】本人は拒否できる
仮名加工情報
←個人情報保護法第4章
【対象)医療情報に限られない個人情報全般
【手続】第三者提供不可。 内部利用以外は、共同利用や委託等でしか共有不可。   元々、事実上の目的外利用を容易にする仕組み。
【拒否】本人は拒否できない
※行政機関等仮名加工情報というものはない行政機関等仮名加工情報というものは存在しない。

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改訂版Q&Aでわかる医療ビッグデータの法律と実務

改訂版 Q&Aでわかる医療ビッグデータの法律と実務

(日本法令、2019年初版、2024年改訂)

執筆者:弁護士水町雅子