【動画公開】メールアドレス・Cookie・電話番号・住所は個人情報か|連絡可能個人関連情報新設の背景

本記事のポイント

  • 個人情報とは「大事な情報」ではなく、「生存する個人に関する情報であって、特定の個人を識別できる情報」である。
  • 電話番号やメールアドレス単体は、常に個人情報になるわけではなく、ケースによって判断が変わる。
  • Cookieも単体では個人情報ではないと整理されてきた。
  • しかし電話番号、メールアドレス、Cookieには本人追跡や本人連絡に利用できるというプライバシーリスクが存在する。
  • 個人情報保護法2026年改正では、この問題意識を背景として「連絡可能個人関連情報」が創設された。

担当者がまず確認すべき事項

  • 連絡可能個人関連情報規制対応として確認すべき事項はこちらを参照されたい。以下では、連絡可能個人関連情報規制対応というよりも、幅広い話として、メールアドレスやCOOKIE等の個人情報該当性論点で確認すべき事項を記載する。
    • 個人情報の定義・概念理解
    • 自社が保有している情報に対する個人情報/非個人情報の整理が正確か
    • 外部送信規律対応と個人情報保護法対応をどのように整理しているか

概要比較表

項目個人情報になるか動画での整理
電話番号場合による個人を識別できるかによるので、リスクヘッジとしてすべて個人情報として整理している場合も多い
メールアドレス場合による個人を識別できるかによるので、リスクヘッジとしてすべて個人情報として整理している場合も多い
Cookie単体では通常該当しないブラウザ識別であり個人識別ではない
連絡可能個人関連情報該当しない本人到達性(情報伝達・連絡可能性)に着目

はじめに

電話番号は個人情報なのか。メールアドレスは個人情報なのか。Cookieは個人情報なのか。非常によく受ける質問である。

しかし個人情報保護法上の答えは単純ではない。なぜなら、これらは一律に個人情報になるわけではなく、ケースによって結論が変わるからである。

そして、この問題を理解すると、2026年改正でなぜ連絡可能個人関連情報という制度が創設されたのかについても理解が深まる。

本記事では、個人情報の定義から出発し、電話番号、メールアドレス、Cookieの整理を行ったうえで、連絡可能個人関連情報創設の背景について考えていく。

動画解説

本記事に記載しきれていない部分も動画には含まれています。動画の方が、内容が豊富で、かつ熱量や細かなニュアンスまでお伝え可能なため、ぜひ動画でご視聴ください。1.5倍速視聴もおすすめです。

タイムライン

00:00 はじめに・個人情報のよくある誤解 01:37 個人情報の定義
03:50 電話番号は個人情報か
06:27 メールアドレスは個人情報か 08:27 容易照合性と個人情報該当性 09:31 「誰の情報か分かる」とは何か
11:49 Cookieは個人情報か
13:11 なぜ連絡可能個人関連情報が必要なのか 15:12 改正への意見・個人情報保護法による規制の意義 15:59 Cookie規制と電気通信事業法の課題 17:26 規制のPDCAと実務への反映 18:18 Cookieバナー実務との関係 19:50 今後の制度設計の方向性

本記事・本動画はPart2解説であり、以下のPart1動画で規制解説をメインに行っている

個人情報保護法における個人情報の定義

結論から言うと、個人情報保護法における個人情報とは、「大事な情報」や「本人に連絡できる情報」ではない。

ポイントは、「生きている人の情報であり、誰の情報かわかること」である。

個人情報の定義

個人情報とは、生存する個人に関する情報であって、特定の個人を識別することができる情報である。

この定義を一言で説明するなら、

生きている人の情報で、誰の情報かわかるもの

個人情報は意外に範囲が広い

一般には、

  • 秘密の情報
  • 重要な情報
  • プライバシー性の高い情報
  • 私的な事柄

を個人情報と理解している場合が多い。

しかし個人情報保護法の定義はそうなっていない。

例えば、

  • 上場企業の社長名
  • 総理大臣の氏名

であっても、誰の情報かわかるので個人情報である。公開情報であっても個人情報なのである。

個人情報ではない場合

反対から見ると、

誰の情報かわからなければ個人情報ではない

ここから電話番号やメールアドレスの議論につながる。

電話番号は個人情報か

結論として、電話番号は常に個人情報になるわけではない。

電話番号が誰の情報かわかるかどうかによって評価が変わる。

携帯電話番号の場合

携帯電話番号は通常、一人に一つ対応していることが多い。

そのため個人情報と考えやすい。

もっとも、

  • 親の携帯電話を子どもが使っている場合
  • 社員共用の携帯電話、店舗用携帯電話である場合

などもありうる。

そのため、一律には論じられない。

固定電話の場合

固定電話も様々である。

例えば、

  • 一人暮らし世帯
  • 家族共有
  • 呼出電話

などがある。

したがって固定電話番号だけで一律に判断することは難しい。

勤務先電話番号の場合

勤務先電話番号も、

  • 個人専用番号
  • 部署共有番号
  • 代表電話番号

など様々である。

実務上のポイント

実務上は、

  • どの電話番号が個人情報か
  • どの電話番号が個人情報でないか

を厳密に仕分けることは困難である。

そのため多くの事業者は、電話番号をすべて個人情報として管理している例も多いと思われる。

メールアドレスは個人情報か

メールアドレスもケースによって個人情報該当性が変わる。

氏名が含まれるメールアドレス

氏名が含まれているメールアドレスは個人情報と考えられる。

例えば、

  • masako.mizumachi@example.com

のような場合である。

苗字のみの場合

苗字のみの場合は評価が難しいが、誰の情報かわかる可能性があるので、個人情報と考えた方が適切である。

一方で、

  • ありふれた姓
  • 一般的なメールサービスのドメイン名

の組み合わせであれば、特定個人がわからない場合もありうる。

数字や記号のみの場合

意味のない数字列や記号列のみで構成されるメールアドレスは、通常は個人情報に該当しないと考えられる。

容易照合性

もっとも、この問題を難しくしているのが容易照合性である。

容易照合性とは何か

メールアドレス単体では個人情報でなくても、

  • 氏名
  • 顧客情報

と紐付いている場合には、誰の情報かわかる。

そのため個人情報と評価される場合がある。

実務上のポイント

実務では、氏名を合わせて保有している場合が多い。

メールアドレス単体や電話番号単体で保持している場合も、顧客管理データベースに登録されている

データがどのようなメールアドレスなのか電話番号なのかは一個一個判断できない場合も多く、個別判断を行うよりも、メールアドレス全体や電話番号全体を個人情報として管理している企業が多いと思われる。

「誰の情報かわかる」とは何か

結論として、「誰の情報かわかる」とは知人であることや顔見知りであることを意味しない。

本人を知らなくても個人情報になる

例えば、「水町雅子」という氏名が書いてあったとして、その人物を知らない人もいる。

しかしだからといって個人情報でなくなるわけではない。

同姓同名でも個人情報

日本中に同じ氏名の人が複数いたとしても、氏名は個人情報である。

個人情報該当性の要件として、一人しか存在していないことは不要である。

顔写真も同じ

顔写真も、

  • 見た人が知らない
  • 誰だかわからない

という理由だけで個人情報ではなくなるわけではない。

個人到達性との違い

個人情報該当性の判断にとって、個人到達性は参考になる。

しかし、

本人に連絡できる=個人情報

ではない。

例えば数字列だけのメールアドレスにメールを送り、相手と連絡が取れたとしても、そのメールアドレスが直ちに個人情報になるとは整理されない。

Cookieは個人情報か

Cookie単体は通常、個人情報ではないと整理されてきた。

Cookieが個人情報ではないとされる理由

Cookieは個人を識別しているのではなく、ブラウザを識別していると考えられている。

また、

  • 共用ブラウザかもしれない
  • 誰が利用しているかわからない

という事情がある。

氏名と紐付いている場合

もっとも、

  • 氏名
  • メールアドレス

等と紐付いている場合は別の問題となる。

なぜ連絡可能個人関連情報が必要になったのか

個人情報ではない場合があっても、プライバシーリスクは存在するからである。

従来の問題

従来は、

  • Cookie
  • 個人情報に該当しないメールアドレス
  • 個人情報に該当しない電話番号

などは、個人情報の対象外になりやすかった。個人情報ではないとなると、個人情報保護法の主な規制対象から外れてしまう。

それでもリスクは存在する

しかし、

  • 本人追跡
  • 過度なターゲティング
  • 本人への連絡

に利用できる。

電話番号やメールアドレスについても、詐欺などの問題が現実に発生している。
プライバシーリスクも無視できずに確実に存在する。

制度趣旨

そのため、

個人情報にギリギリ該当しない場合であっても、

  • 本人追跡
  • 本人連絡

に利用できる情報は規制対象にすべきではないかという議論が続いてきた。

連絡可能個人関連情報と個人情報保護法2026年改正

プライバシーリスク保護という観点からは意義のある改正である。

連絡可能個人関連情報創設の意義

個人情報保護法の究極的な目的は、細かな概念整理そのものではない。

プライバシーリスクから人を守ることである。

その観点から、

  • 個人情報ではない場合がある
  • しかし追跡や連絡に利用できる

という情報を規制対象にしたことは評価できる。

一方で課題もある

動画では、

  • Cookie規制として十分か
  • 現状の制度でよいか

については別途議論が必要であると指摘している。

Cookie規制と今後の課題

電気通信事業法との関係

現状では、

  • 外部送信規律
  • 個人情報保護法の連絡可能個人関連情報規制(2026年改正で新設)

が並行して存在している。

Cookie規制として一本化した方が理解しやすいのではないか。

プラットフォーマーへの情報提供義務

外部送信規律の公表事項を見ると、非常に多くの外部送信が行われている。

しかし一事業者だけでは把握が難しい場合もある。

そのため、プラットフォーマー側への義務強化も検討してよいのではないか。

規制のPDCA

新たな規制を導入する際には、

  • 規制対応を具体的にどう実装するか
  • 実際に運用してみて、規制を導入する目的が達成できているか(Cookie規制でいえば、消費者から見て透明性が向上するか・選択できるようになるか等)
  • 実際に運用してみて、実益のない負担はないか(プラットフォーマー側の情報が不足しており十分な情報提供ができない、膨大な情報提供となってしまい消費者・企業とも実益が少ないとも思える等)
  • 改善点を検討し、制度に反映する

というPDCAが重要である。

事業者が実装して初めて見える課題も多いからである。

Cookie実務とのギャップ

現在のWebサイトでは、

  • Cookieバナー
  • 同意ボタン
  • みなし同意
  • 機能ごとのオンオフ設定

など様々な仕組みが存在する。

しかし実際のCookie運用と法制度が完全に一致しているわけではない。このギャップを埋めることが今後の課題である。

動画解説

本記事・本動画はPart2解説であり、以下のPart1動画で規制解説をメインに行っている


よくある質問(Q&A)

Q1. 電話番号単体は個人情報ですか?

ケースによる。特定の個人を識別できる場合は個人情報となるが、共有利用や代表番号などでは個人情報ではないという解釈も可能である。
氏名等と紐づいている場合は、容易照合性から個人情報に該当する。

Q2. メールアドレス単体は個人情報ですか?

ケースによる。メールアドレスの中に氏名が含まれる場合などは個人情報となる。
また、氏名等と紐づいている場合は、容易照合性から個人情報に該当する。

Q3. Cookie単体は個人情報ですか?

Cookie単体は通常個人情報ではない。ただし氏名等と紐づいていたり、長期追跡によって氏名等がなくても誰の情報かわかる場合等は、容易照合性から個人情報に該当する。

Q4. 個人情報とは何ですか?

生存する個人に関する情報であって、特定の個人を識別できる情報である。

Q5. 個人到達性があれば個人情報ですか?

そうとは限らない。本人に到達できることと個人情報該当性は同じ概念ではない。

Q6. 容易照合性とは何ですか?

他の情報と組み合わせることで特定の個人を識別できれば、個人情報に該当するという概念をいう。

Q7. なぜ連絡可能個人関連情報が新設されたのですか?

個人情報に該当しなくても、情報伝達や連絡に利用されることによるプライバシーリスクが存在するためである。

Q8. 個人関連情報は個人情報ですか?

個人関連情報は個人情報ではない。個人情報保護法2条7項で、「個人関連情報」とは、生存する個人に関する情報であって、個人情報、仮名加工情報及び匿名加工情報のいずれにも該当しないものをいうとされている。

Q9. k=1なら個人情報ですか?

必ずしもそうとは限らない。k=1でも誰の情報かわからない場合は個人情報ではない。

Q10. k>=2なら非個人情報ですか?

必ずしもそうとは限らない。同姓同名がいる氏名情報などでも個人情報に該当する。

Q11. 外部送信規律とは?

令和5年6月16日に施行された電気通信事業法に基づくCookie等規制。電気通信事業法とはいえ、電話やインターネットキャリアといった業界のみならず、アプリやSaaSを提供していたり、掲示板を運営していたり、地図情報の発信、ニュース配信サービスなどを行っていたりしても、対応が必要となりうる。スマホアプリのみならず、Webシステムも対象。

電気通信事業者か第3号事業を営む者に当たれば、Cookieタグ等の利用者情報を外部送信する際に、公表などが必要となる。なお、「外部送信」といっても、個人データの第三者提供とは異なり、利用者情報を自社サーバに送信する場合も、対応が必要となる。(例外、1stParty CookieのID、真に必要な情報等)。
詳しくは以下参照。
外部送信規律対応要否判断フローチャート
https://www.mizu-machi.com/wp-content/uploads/2025/05/230419gaibusoushinkiritsu.pdf

外部送信規律
https://cyberlawissues.hatenablog.com/entry/2023/01/23/185620

まとめ

電話番号、メールアドレス、住所、Cookieは、いずれも一律に個人情報になるわけではない。

個人情報かどうかは、「生存する個人に関する情報であって、特定の個人を識別できるか」で判断される。

一方で、個人情報に該当しない場合であっても、追跡や連絡に利用できることによるプライバシーリスクは存在する。

個人情報保護法2026年改正で連絡可能個人関連情報が創設された背景には、まさにこの問題意識がある。

個人情報該当性という法技術的な議論だけでなく、プライバシーリスクから人を守るという制度趣旨まで視野に入れて理解することが重要である。

関連資料集

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個人情報保護法、プライバシーガバナンスに関する理解の促進を目的として情報発信を行っています。
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執筆者プロフィール

弁護士 水町雅子(第二東京弁護士会、宮内・水町IT法律事務所所属)

SE(ITシステム開発)、コンサルティング等をシンクタンクにて行った後、弁護士登録。内閣官房・特定個人情報保護委員会にてマイナンバーの制度設計、ガイドライン作成、PIA制度化等を行う。
個人情報・ITに関して、首相官邸パーソナルデータに関する検討会参考人、内閣府「マイナンバーの利活用拡大のための検討タスクフォース」委員、こども家庭庁「こどもデータ連携の取組に関する検討会」委員、厚生労働省ITシステム等技術審査委員、東京都東京デジタルサービス会議構成員、東京都足立区情報公開・個人情報保護審議会委員、つくば市プライバシー影響評価制度検討懇話会委員、総務省・経産省・AMED実証事業等の支援等、実績豊富。
マイナンバー、個人情報、AI、医療情報、IT法務、企業法務、行政法務等に対応。書籍・論文執筆・講演のほか、日本経済新聞、朝日新聞、読売新聞、雑誌、TV等メディアコメント多数。

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