【動画公開】個人情報保護法の不適正利用禁止とは何か|個人情報保護法19条31条の2第1項63条72条の2第1項(Part3)

本記事のポイント

  • 個人情報保護法における不適正利用禁止の内容を解説
  • 「違法または不当な行為を助長し、又は誘発するおそれがある方法による利用」の意味を整理
  • ガイドラインに示された代表事例を紹介
  • なぜ個人情報保護法2020年改正で不適正利用禁止が導入されたのかを解説
  • 個人情報保護法2026年改正で連絡可能個人関連情報にも不適正利用禁止が拡大された点を説明
  • 個人情報保護法と不法行為法との関係を整理

担当者がまず確認すべき事項

  • 自社の利用目的は社会通念上妥当といえるか
  • データ提供先で違法・不当な利用が行われる危険はないか
  • 利用目的の範囲内だから問題ないという発想になっていないか
  • 個人情報保護法違反だけでなくプライバシー侵害や不法行為の観点も確認しているか
  • 連絡可能個人関連情報についても利用目的の適切性(&取得方法の妥当性)を検討しているか

動画解説

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タイムライン

00:00 不適正利用禁止のルール
02:28 ガイドラインにおける不適正利用の例
02:56 -闇金業者への提供
03:11 -破産者マップ
03:39 -暴力団・総会屋
04:07 -提供先の法令違反が予見できる場合
04:40 -採用過程取得情報の差別的取扱い
05:26 不適正利用禁止が創設された背景
06:14 -利用目的特定だけでは対応できなかった課題
06:53 -不法行為との関係
10:34 事業者が実務上注意すべきポイント、消費者向けポイント

Part1 個人関連情報規制に企業はどう対応すべきか

Part2 個人関連情報規制はなぜ新設されたか なぜメールアドレス・電話番号・COOKIE・住所は非個人情報の場合があるのか

はじめに

個人情報保護法では、個人情報の取得や第三者提供だけではなく、利用態様そのものも問題となる。取得方法や提供方法だけではなく、「どのような目的で利用されるのか」「その利用が社会的に許容されるものなのか」という点を検討する必要がある。

本記事では、個人情報保護法19条・63条の不適正利用禁止および2026年改正で導入された連絡可能個人関連情報に関する不適正利用禁止(個人情報保護法31条の2第1項・72条の2第1項)について解説する。

本記事は、連絡可能個人関連情報のPart3ブログである。Part1(改正法や規制内容), Part2(改正の背景として、メールアドレスや電話番号、住所、COOKIEは個人情報ではないのか、Cookie規制はどうあるべきか)も参照されたい。

不適正利用禁止とは何か

結論から言うと、不適正利用禁止とは、違法または不当な行為を助長し、又は誘発するおそれがある方法による利用を禁止する規制である。

個人情報保護法では、不適正利用禁止として次のような規定が置かれている。

違法又は不当な行為を助長し、又は誘発するおそれがある方法により個人情報を利用してはならない

不適正利用の定義

ガイドラインでは、不適正利用について次のように説明されている。

個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」

https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/guidelines_tsusoku/#a3-2

「違法又は不当な行為」とは、法(個人情報の保護に関する法律)その他の法令に違反する行為、及び直ちに違法とはいえないものの、法(個人情報の保護に関する法律)その他の法令の制度趣旨又は公序良俗に反する等、社会通念上適正とは認められない行為をいう。

個人情報保護法その他の法令に違反する行為だけではなく、直ちに違法とはいえない場合でも、法令の制度趣旨や公序良俗に反したり、社会通念上適正と認められない行為が対象となる。

もっとも、この説明はかなり抽象的である。

実務上は、

  • 犯罪
  • 違法行為
  • 差別的取扱い
  • 著しく不当な行為

などが問題になることが多い。但し、それは現在公表されている実例がそうなっているだけに過ぎず、もう少し幅広な行為も、不適正利用禁止に該当する可能性がある。

ガイドラインに示された不適正利用の具体例

現在公表されている事例の多くは、社会的に問題視されるような悪質事案である。

特殊詐欺グループへの名簿提供

代表例が特殊詐欺グループへの名簿提供である。

https://www.ppc.go.jp/files/pdf/250910_houdou.pdf

これは一般的な感覚からしても不適切であり、不適正利用に該当することに大きな異論はないと思われる。

違法業者への個人情報提供

ガイドラインでは、違法行為が疑われる事業者に対する情報提供も例示されている。

例えば、

  • 闇金業者への情報提供
  • 貸金業登録を行っていない貸金業者への情報提供

などである。

違法行為が行われることが予見できるにもかかわらず個人情報を提供する場合、不適正利用に該当する可能性がある。

個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」

https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/guidelines_tsusoku/#a3-2

【個人情報取扱事業者が違法又は不当な行為を助長し、又は誘発するおそれがある方法により個人情報を利用している事例】

事例1)違法な行為を営むことが疑われる事業者(例:貸金業登録を行っていない貸金業者等)からの突然の接触による本人の平穏な生活を送る権利の侵害等、当該事業者の違法な行為を助長するおそれが想定されるにもかかわらず、当該事業者に当該本人の個人情報を提供する場合

破産者マップのような事例

ガイドラインでは、破産者情報のデータベース化も例として挙げられている。

裁判所で公開された破産情報(散在情報)であっても、

  • 違法な差別が誘発されるおそれがあること

が予見できるにもかかわらず、それを集約してデータベース化してインターネット上で公開する行為も例に挙げられている。いわゆる「破産者マップ」が社会問題となったことを想起させる事例である。

個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」

https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/guidelines_tsusoku/#a3-2

【個人情報取扱事業者が違法又は不当な行為を助長し、又は誘発するおそれがある方法により個人情報を利用している事例】

事例2)裁判所による公告等により散在的に公開されている個人情報(例:官報に掲載される破産者情報)を、当該個人情報に係る本人に対する違法な差別が、不特定多数の者によって誘発されるおそれがあることが予見できるにもかかわらず、それを集約してデータベース化し、インターネット上で公開する場合

暴力団等への情報開示

暴力団や総会屋による不当要求が助長されることが予見できるにもかかわらず、

  • 暴力団等に関する情報
  • 不当要求被害防止業務を行う事業者の責任者名簿

等をみだりに開示する行為も例に挙げられている。

個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」

https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/guidelines_tsusoku/#a3-2

【個人情報取扱事業者が違法又は不当な行為を助長し、又は誘発するおそれがある方法により個人情報を利用している事例】

事例3)暴力団員により行われる暴力的要求行為等の不当な行為や総会屋による不当な要求を助長し、又は誘発するおそれが予見できるにもかかわらず、事業者間で共有している暴力団員等に該当する人物を本人とする個人情報や、不当要求による被害を防止するために必要な業務を行う各事業者の責任者の名簿等を、みだりに開示し、又は暴力団等に対しその存在を明らかにする場合

提供先による法令違反が予見できる場合

さらに、

個人情報の提供先が個人情報保護法違反を行うことが予見できるにもかかわらず提供する場合

も例示されている。

個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」

https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/guidelines_tsusoku/#a3-2

【個人情報取扱事業者が違法又は不当な行為を助長し、又は誘発するおそれがある方法により個人情報を利用している事例】

事例4)個人情報を提供した場合、提供先において法第27条第1項に違反する第三者提供がなされることを予見できるにもかかわらず、当該提供先に対して、個人情報を提供する場合

もっとも、この場面は実務上判断が難しい。

どの程度の事情があれば、

  • 違反が予見できたといえるのか
  • 予見できなかったといえるのか

は個別事情による部分が大きい。社会通念上蓋然性が認められるか、一般的な注意力をもってしても予見できたかという解説もあるが、なかなか線引きは難しいといえよう。

実例としては、販売先が、法に違反するような行為を行う者にも名簿を転売する転売屋(ブローカー)だと認識していたにもかかわらず、意図的に販売先での名簿の用途を詳しく確認せず、転売屋に名簿を販売した事例等がある。

https://www.ppc.go.jp/files/pdf/240117_houdou.pdf

採用情報の差別的利用

採用活動で取得した情報について、違法な差別的取扱いを行う目的で利用することも例示されている。

個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」

https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/guidelines_tsusoku/#a3-2

【個人情報取扱事業者が違法又は不当な行為を助長し、又は誘発するおそれがある方法により個人情報を利用している事例】

事例5)採用選考を通じて個人情報を取得した事業者が、性別、国籍等の特定の属性のみにより、正当な理由なく本人に対する違法な差別的取扱いを行うために、個人情報を利用する場合

不適正利用禁止はどこまで広がるのか

現時点では比較的悪質な事例を中心に適用が想定されている。

実際に問題となっている事例を見ると、

  • 犯罪
  • 詐欺
  • 違法業者
  • 差別的利用

などが中心である。

そのため、不適正利用禁止に該当すると判断される場面は、現在のところ限定的であると考えられる。

もっとも、条文自体は比較的抽象的な規定である。

「違法又は不当な行為を助長し、又は誘発するおそれ」

という文言は解釈の余地が広いため、今後の運用次第では適用範囲が広がる可能性もある。

なぜ不適正利用禁止が導入されたのか

不適正利用禁止は利用目的の内容や利用態様を規律するために導入されたと考えられる。

2020年法改正以前の考え方

2020年改正以前の個人情報保護法では、

  • 利用目的を特定する
  • 特定した利用目的の範囲内で利用する

という枠組みが中心であった。

そのため、

  • 利用目的の内容そのものが妥当かどうか

という問題については、必ずしも十分にカバーできていなかった。

利用目的の範囲内であれば目的内利用で適法という問題

極端にいえば、

  • 利用目的が具体的に特定されている
  • その範囲内で利用している

という形式を満たせば、個人情報保護法上は問題になりにくかった。

しかし実際には、

  • 利用目的が社会的に妥当なのか
  • 利用方法が適切なのか

という問題がある。

こうした課題への対応として、不適正利用禁止が導入された。

リクナビ問題との関係

制度導入の背景としては、リクナビ問題なども指摘されている。

単に取得や提供だけではなく、利用のあり方そのものが社会問題化したことが改正の背景にある。

不適正利用禁止と不法行為の関係

もっとも、不適正利用禁止がなかった時代から、利用方法の妥当性は法的問題となり得た。

個人情報保護法だけがルールではない

個人情報をめぐる問題は、個人情報保護法だけで完結するわけではない。

プライバシー侵害などについては、民法上の不法行為として損害賠償責任が問題となる。

利用目的の妥当性は以前から問題だった

利用方法が不適切な場合、不適正利用禁止がなかった時代でも、

  • プライバシー権侵害等の不法行為

として評価される可能性はあった。

そのため実務上は、

  • 利用目的の妥当性
  • 利用態様の妥当性等

を検討する必要があった。

不適正利用禁止は不法行為より狭い可能性がある

不適正利用禁止の条文を見る限り、

違法又は不当な行為の助長・誘発

という要件がある。

そのため、不法行為一般と比較すると適用範囲は狭い可能性がある。

したがって、

不適正利用禁止に該当しないから問題がない

とはならない。

不法行為の観点から問題となる可能性は当然残る。

実務上のポイント

結論として、利用目的の範囲内かどうかだけを確認していては不十分である。

担当者が確認すべき事項

  • 利用目的自体が社会的に妥当か
  • 利用態様が適切か
  • 差別的利用につながらないか
  • 犯罪利用・不適切行為を助長しないか
  • 提供先で違法利用される危険はないか
  • プライバシー権侵害を生じさせないか
  • 個人情報保護法だけでなく不法行為リスクも確認しているか

2026年改正で何が変わるか

個人関連情報の不適正利用禁止

個人情報保護法2026年改正では連絡可能個人関連情報にも不適正利用禁止が導入された。

考え方は個人情報の場合と基本的に同じである。

つまり、

違法又は不当な行為を助長し、又は誘発するおそれがある方法により連絡可能個人関連情報を利用してはならない

そのため、個人情報に該当しない、連絡可能個人関連情報についても、利用目的の適切性・利用態様が重要となる。

動画解説

本記事に記載しきれていない部分も動画には含まれています。動画の方が、内容が豊富で、かつ熱量や細かなニュアンスまでお伝え可能なため、ぜひ動画でご視聴ください。1.5倍速視聴もおすすめです。

Part3 本記事に相当する動画=不適正利用の解説

Part1 個人関連情報規制に企業はどう対応すべきか

Part2 個人関連情報規制はなぜ新設されたか なぜメールアドレス・電話番号・COOKIE・住所は非個人情報の場合があるのか

よくある質問(Q&A)

Q1 不適正利用禁止とは何ですか?

違法又は不当な行為を助長し、又は誘発するおそれがある方法による利用を禁止する規定である。

Q2 特殊詐欺への名簿提供は不適正利用になりますか?

なる。実際に不適正利用と判断された例がある。

Q3 破産者マップのような事例はなぜ問題になりますか?

差別的取扱いや不当な利用が誘発されることが予見できるためである。

Q4 利用目的の範囲内であれば必ず適法ですか?

そうではない。利用目的の妥当性や利用方法の適切性も問題となる。

Q5 不適正利用禁止に該当しなければよいですか?

そうではない。不適正利用ではなく個人情報保護法違反ではない場合でも、不法行為が成立する可能性がある。

Q6 連絡可能個人関連情報にも不適正利用禁止は適用されますか?

個人情報保護法2026年改正により適用対象となった。

まとめ

不適正利用禁止は、個人情報保護法において利用目的・利用態様に着目した規制である。

現時点では、詐欺や差別など社会的に問題の大きい事例が中心となっているが、事業者としては利用目的の範囲内かどうかだけではなく、利用目的の妥当性や利用態様の適切性も検討しなければならない。

また、不適正利用禁止に該当しない場合であっても、不法行為の問題は別途生じ得る。個人情報保護法のみならず、より広い観点から利用内容を検討することが重要である。

関連資料集

社内情報共有・紹介について

個人情報保護法、プライバシーガバナンスに関する理解の促進を目的として情報発信を行っています。
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執筆者プロフィール

弁護士 水町雅子(第二東京弁護士会、宮内・水町IT法律事務所所属)

SE(ITシステム開発)、コンサルティング等をシンクタンクにて行った後、弁護士登録。内閣官房・特定個人情報保護委員会にてマイナンバーの制度設計、ガイドライン作成、PIA制度化等を行う。
個人情報・ITに関して、首相官邸パーソナルデータに関する検討会参考人、内閣府「マイナンバーの利活用拡大のための検討タスクフォース」委員、こども家庭庁「こどもデータ連携の取組に関する検討会」委員、厚生労働省ITシステム等技術審査委員、東京都東京デジタルサービス会議構成員、東京都足立区情報公開・個人情報保護審議会委員、つくば市プライバシー影響評価制度検討懇話会委員、総務省・経産省・AMED実証事業等の支援等、実績豊富。
マイナンバー、個人情報、AI、医療情報、IT法務、企業法務、行政法務等に対応。書籍・論文執筆・講演のほか、日本経済新聞、朝日新聞、読売新聞、雑誌、TV等メディアコメント多数。

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