【動画公開】次世代医療基盤法の匿名加工医療情報/仮名加工医療情報と個人情報保護

次世代医療基盤法、医療情報利活用と個人情報保護について解説する。次世代医療基盤法は大臣認定やオプトアウト制度を通じて、医療研究開発の推進とプライバシー保護の両立を目指す制度である。

近年、医療DXや医療ビッグデータ活用への期待が高まっている。他方で、患者の医療情報は極めて機微性が高く、適切な個人情報保護が不可欠である。本記事では、次世代医療基盤法の制度趣旨と主要な仕組みを整理する。

次世代医療基盤法とは何か

次世代医療基盤法は、医療分野の研究開発を促進するために制定された法制度である。

新薬開発、医療機器開発、疫学研究などにおいては、大規模な医療データが必要となる場合が多い。次世代医療基盤法は、そのような研究開発の基盤整備を目的としている。

なぜ医療ビッグデータが必要なのか

医療研究では、一定数以上の症例データが必要である。

病気を発症した患者群と非患者群との比較、治療経過の分析、医薬品の有効性評価などを実施するためには、多数のデータを横断的に分析する必要がある。

匿名加工医療情報とは何か

次世代医療基盤法では、医療情報をそのまま利用するのではなく、本人が識別できないよう加工した上で利用する。

なぜ匿名加工が必要なのか

患者の不安の大きな要因は、病歴や診療情報が第三者に知られる可能性である。

そこで次世代医療基盤法では、プライバシーリスクを低減するため、特定の個人を識別できない匿名加工医療情報を活用する。

単なる氏名削除では足りない

次世代医療基盤法上、適法は匿名加工とするためには、氏名のみを削除しただけでは十分ではない。

住所、生年月日、病歴、診療経過などの情報を組み合わせることにより、本人が推知される可能性がある。

次世代医療基盤法では法令で定められた基準に従った加工が必須である。

仮名加工医療情報とは何か

次世代医療基盤法改正で、匿名加工医療情報だけではなく、仮名加工医療情報制度が新たに設けられた。

なぜ仮名加工が必要なのか

匿名加工医療情報だと、患者のプライバシー権保護に厚い。
他方で、希少値が取り扱えないため、希少疾患の研究開発が困難となったり、長期間に及ぶ継続的経過をたどることが困難となったり、様々な課題があった。

そこで、次世代医療基盤法改正で仮名加工医療情報制度を新設し、加工基準を匿名加工とは分けたうえで、仮名加工医療情報を取り扱える資格として新たな大臣認定の仕組みを設けた。

認定作成事業者とは何か

匿名加工医療情報の作成を行うためには、主務大臣の認定を受ける必要がある。

認定事業者に限定する理由

高度な情報管理体制と専門的な加工能力が必要であるためである。

行政による事前審査を経た事業者のみが医療情報を取り扱うことで、安全性の確保を図っている。

委託先にも厳格な管理が求められる

認定事業者自身だけでなく、委託先に対しても厳格な統制が求められる。

医療情報の管理体制全体について、安全性の担保が制度設計上重視されている。

安全管理措置と監督制度

認定事業者は認定取得後も継続的な監督を受ける。

安全管理措置の維持、法令遵守、ガイドライン遵守などが求められ、違反があれば認定取消の対象となり得る。

多大な労力と時間とコストをかけて取得した大臣認定が取り消されれば一大事である。そのため、大臣認定を受けた事業者には、認定取消となりうる事態を避けるインセンティブが働くと推測される。

オプトアウト制度とは何か

患者本人には提供停止を求める機会が保障されている。

同意方式との違い

次世代医療基盤法はオプトアウト方式を採用している。

オプトイン方式と比較するとデータ収集量を確保しやすく、医療研究開発に必要な規模のデータを確保できる利点がある。

他方で、匿名加工や認定制度などの保護措置を組み合わせることで、個人情報保護水準の確保を図っている。

Q&A

Q1. 次世代医療基盤法の目的は何か

A. 医療分野の研究開発促進と個人情報保護の両立である。

Q2. 医療情報はそのまま利用されるのか

A. 利用前に加工され、本人識別が困難な状態に加工される。

Q3. 誰でも医療情報を加工できるのか

A. 主務大臣の認定を受けた事業者のみが加工することができる。

Q4. 患者は利用を拒否できるのか

A. 患者にはオプトアウトにより、拒否機会が保障されている。

まとめ

次世代医療基盤法は、医療ビッグデータ時代における重要な基盤法制である。

本法は、加工(匿名加工、仮名加工)、大臣認定、大臣による継続監督、オプトアウト制度を組み合わせることによって、医療研究開発の促進と個人情報保護の両立を目指している。

改訂版Q&Aでわかる医療ビッグデータの法律と実務

改訂版 Q&Aでわかる医療ビッグデータの法律と実務

(日本法令、2019年初版、2024年改訂)

執筆者プロフィール

弁護士 水町雅子(第二東京弁護士会、宮内・水町IT法律事務所所属)

SE(ITシステム開発)、コンサルティング等をシンクタンクにて行った後、弁護士登録。内閣官房・特定個人情報保護委員会にてマイナンバーの制度設計、ガイドライン作成、PIA制度化等を行う。
個人情報・ITに関して、首相官邸パーソナルデータに関する検討会参考人、内閣府「マイナンバーの利活用拡大のための検討タスクフォース」委員、こども家庭庁「こどもデータ連携の取組に関する検討会」委員、厚生労働省ITシステム等技術審査委員、東京都東京デジタルサービス会議構成員、東京都足立区情報公開・個人情報保護審議会委員、つくば市プライバシー影響評価制度検討懇話会委員、総務省・経産省・AMED実証事業等の支援等、実績豊富。
マイナンバー、個人情報、AI、医療情報、IT法務、企業法務、行政法務等に対応。書籍・論文執筆・講演のほか、日本経済新聞、朝日新聞、読売新聞、雑誌、TV等メディアコメント多数。

詳細な略歴はこちら