【動画公開】マイナンバーカードICチップと画像アップ本人確認の差異。そしてマイナンバーカードありきではない属性証明の可能性
本記事のポイント
- 本人確認書類画像+顔撮影による本人確認形式が最近一般的であるが、ICチップ読取の方が、なりすまし対策の強度に違いがある。タイムズカーで運転免許証画像が漏えいしたとの報道がなされているが、ICチップ読取や属性証明に切り替えれば、なりすまされにくくなる。
- マイナンバーカードによる本人確認は、多くの場合、マイナンバーそのものを利用しているわけではない。
- マイナンバーカードへの不安・評価と、ICチップ読取や属性証明への評価は分けて考える必要がある。
- デジタルの認証手段や属性証明はマイナンバーカードありきではなく、別の方法でも実現可能である。
担当者がまず確認すべき事項
- 自社の本人確認は本人確認書類画像とICチップ認証のどちらを利用しているか。
- なりすましリスク低減の観点から認証方式を見直す必要がないか。
- マイナンバーカード利用時にマイナンバーそのものを取得しているか、それとも電子証明書等のみを利用しているか。
- 利用者に対して取得情報を十分説明できているか。
- 将来的な属性証明等への対応可能性を検討しているか。
動画解説
本記事に記載しきれていない部分も動画には含まれています。動画の方が、内容が豊富で、かつ熱量や細かなニュアンスまでお伝え可能なため、ぜひ動画でご視聴ください。1.5倍速視聴もおすすめです。
タイムライン
- 00:00 前回動画の補足と本動画のテーマ
- 00:57 eKYC 本人確認書類+顔撮影
- 01:38 ICチップ認証となりすまし対策
- 03:17 マイナンバーカード本人確認の評価
- 04:54 マイナンバーカード利用とマイナンバー利用は違う
- 06:14 なぜ利用者に誤解が生じやすいのか
- 07:36 マイナンバーカード以外のデジタル証明
- 08:19 なりすまし防止の重要性と今後のデジタル認証基盤
前回動画を踏まえた本動画の位置付け
本動画は、前回の「タイムズカーにおける運転免許証画像漏えい問題」(以下YouTube参照)をきっかけとして議論した本人確認の将来像を補足する内容である。
前回動画では、本人確認書類のコピーや画像を保有しない本人確認の将来について触れ、その中で属性証明について話した。
これに対し、「結局はマイナンバーカードなのではないか」という懸念を持つ人もいると考えられる。
そこで本動画では、
- マイナンバーカードによる本人確認とは何か
- ICチップ認証と本人確認書類写真との違い
- マイナンバー利用に関する誤解
- マイナンバーカード以外によるデジタルによる認証手段や属性証明の可能性
について話した。
ICチップ読取
なりすまし対策という観点では、ICチップ読取形式の方が強いと一般に言われている。
従来は本人確認書類のコピーを郵送する方式が広く利用されていた。しかし、オンラインサービスの拡大に伴い、本人確認書類を撮影して送信し、さらに利用者本人の顔画像を撮影して照合するeKYCが普及した。
eKYCとは何か
eKYC(electronic Know Your Customer)とは、オンライン上で本人確認を行う仕組みである。
典型的には、
- 本人確認書類を撮影する
- 利用者本人の顔を撮影する
- 両者を照合する
という方法が昨今では一般的のように思われる。
ICチップ読取方式とは何か
ICチップ認証とは、カードに搭載されたICチップの情報を利用して本人確認を行う方式である。
マイナンバーカードのICチップを利用した本人確認や、民間証明書のICチップを利用した本人確認が例として挙げられる。
金融庁「犯 罪 収益移転防止法におけるオンラインで完結可能な本人確認方法の概要」https://www.fsa.go.jp/common/law/guide/kakunin-qa/2.pdf
本人確認書類のコピーや画像が抱える課題
本人確認書類のコピーや画像による確認は、偽造や悪用のリスクを完全には排除できないと考えられる。
紙のコピーのリスク
紙のコピーの場合、一度コピーが流出すると、その後の管理や利用を本人がコントロールすることは難しい。
また、コピーされた本人確認書類が偽造や不正利用に使われるリスクも存在する。
eKYCの高度化と限界
近年のeKYCでは、
- 顔を映す
- 右を向く
- 左を向く
- カードを傾ける
- カードの厚みを見せる
といったさまざまな工夫が行われている。
しかし、こうした動作もパターン化されているようにも感じられる。
さらに、AI技術の発展等によっては、顔の向きを変えた映像などを生成することも可能になり得るのではないかとも思われる。
ICチップ読取方式が評価される理由
ICチップ読取では偽造が困難であり、そのためなりすまし防止という観点では有効性が高いといわれている。
マイナンバーカードやマイナンバー制度への是非を離れ、認証方式として純粋に見た場合には、なりすまし対策上のメリットがあると考えられる。
実務上のポイント
- 本人確認方式を手軽さだけで選択していないか確認する。
- なりすましリスクをどの程度許容できるのか整理する。
- 本人確認書類画像提出とICチップ読取の特性を比較評価する。
- 認証基盤の将来像を踏まえたシステム設計を検討する。
マイナンバーカード本人確認とマイナンバー利用は同じではない
マイナンバーカードを使った本人確認と、マイナンバーを利用することは別の話であるという点である。
この点は一般には誤解されやすい。
マイナンバーカードとマイナンバーの区別
マイナンバーカードには大きく二つの利用場面があると説明している。
- マイナンバーを利用する場面
- マイナンバーを利用しない場面
である。
マイナンバーを利用する場面
マイナンバーを利用するのは次のような手続である。
- 税関係手続
- 年金手続
- 健康保険手続
- 雇用保険手続
このような税・社会保障分野ではマイナンバーそのものを利用する。
マイナンバーを利用しない場面
一方で、マイナンバーカードを利用した本人確認であっても、多くの場合にはマイナンバーそのものを利用していない。
具体的には、マイナンバーではなく
- 電子証明書
- マイナンバーとは異なる番号(シリアル番号)
などを利用している。
そのため、マイナンバーカードを提示したことと、マイナンバーを取得されたことは同義ではない。
なお、マイナンバーを取得できることが適法な場合は少なく、マイナンバーを取得できないシーンでは、仮にマイナンバーカードの提示を受けたとしてもマイナンバー記載部分のコピーをとったり番号を控えることは違法となる。
プライバシーリスクの違い
マイナンバーを取得している場合と取得していない場合では、プライバシーに関するリスクは異なる。
マイナンバーを取得していない場合も、氏名・住所等は取得されうるが、氏名・住所等による名寄せリスクとマイナンバーによる名寄せリスクとでは、リスクの質量が異なるためである。
「マイナンバーカードを使ったのでマイナンバーも読み取られたのではないか」と考える人もいるが、実際にはマイナンバーカードを提示する多くのケースでマイナンバーそのものは取得されていないことが多い。
利用者から見えにくいことの問題
マイナンバーカード提示時に、利用者からみて何の情報を取得されているか分かりにくいことが不安の原因になっているのではないか。少なくとも筆者は何の情報を取得されているか分かりやすく示してほしいと考える。
利用者は区別できない
マイナンバーカード提示時に、特にピッとかざしたりする場面で、
- マイナンバーを取得したのか
- マイナンバーを取得していないのか
が利用者側から見て分かりにくい。
情報取得の可視化
筆者は以前から、
- マイナンバーを読み取っています
- マイナンバーを読み取っていません
という表示を画面上で行う方が望ましいのではないかと考えている。
民間企業はマイナンバーを自由に利用できない
民間企業がマイナンバーを利用できる場面は少ない。
会社が従業員からマイナンバーを取得するのは、
- 税手続
- 雇用保険手続
- 健康保険手続
- 年金手続
などのためである。
また、金融機関には一定の例外がある(いわゆる預貯金付番)。
しかし、このような税・社会保障・預貯金付番以外の一般的な民間手続では、マイナンバーを取得していないケースが大半である。
実務上のポイント
- 取得情報を利用者へ説明しているか確認する。
- 認証で利用している情報を整理する。
- マイナンバー取得の有無を社内で正確に把握する。
- 利用者の誤解を招かないUIや説明文を検討する。
マイナンバーカード以外でもデジタルによる証明や属性証明は可能
デジタルによる証明手法や属性証明はマイナンバーカード以外でも実現可能である。
マイナンバーカードを普及させようとして属性証明を推奨したり、ICチップ読取方式を推奨しているというものではない。
マイナンバーカードの是非と、ICチップ読取のなりすまし抑止や属性証明の利点は、別の観点である。重要なのは認証の仕組みであり、マイナンバーカードだけを前提とするものではない。
属性証明とは
属性証明についてもマイナンバーカード以外の手段によって実現し得る。例えば民間によるICカードやスマホへの格納など。
マイナンバーカードへの評価と認証技術への評価を分ける
マイナンバーカードに対して心理的抵抗感を持つ人は存在する。
しかし、そのこととICチップ読取や属性証明という技術的な仕組みへの評価は別問題として考えるべきである。
なりすまし対策と認証基盤の将来
今後のデジタル社会では、なりすまし防止機能を備えた認証基盤の重要性がさらに高まる。
昨今では
- 詐欺メール
- 詐欺SMS
- なりすまし
- アカウント乗っ取り
などが社会問題化している。
デジタル空間が拡大するほど、本人であることを電子的に証明する仕組みの重要性は高まる。
- ちょっとだけのデジタル化:単に紙の書類を画像化
から
- 認証基盤そのものの抜本的デジタル化
の方向性について議論していく必要がある。
また、その議論は必ずしもマイナンバーカードを前提にする必要はない。
マイナンバーカードの利用拡大、マイナンバーの利用範囲拡大と、マイナンバーカードによるICチップ読取とでは、プライバシーリスクが質量ともに全く異なる。「マイナンバー」との表記があるとすべてが混同される嫌いが有り、筆者もよくそのような質問を受ける。
動画解説
よくある質問(Q&A)
Q1. マイナンバーカードで本人確認をするとマイナンバーも取得されるのか。
多くの本人確認場面ではマイナンバーそのものは利用されておらず、電子証明書等が利用されている。
Q2. 本人確認書類写真よりICチップ読取の方がセキュアなのか。
なりすまし防止という観点ではICチップ読取の方が強固であると一般に言われている。
Q3. 顔の短い動画撮影を伴うeKYCにも限界はあるのか。
右を向く、左を向く、カードを傾けるといった手順もパターン化しており、AI技術の発展による課題も考えられる。
Q4. マイナンバーカードが嫌な場合はデジタル的な証明手法は利用できないのか。
属性証明などは必ずしもマイナンバーカードだけで実現するものではないと思われる。
Q5. 民間企業はマイナンバーを自由に取得できるのか。
民間企業がマイナンバーを取得・利用できる場面は限定されている。
まとめ
マイナンバーカード本人確認とマイナンバー利用は別の問題であること、そしてなりすまし対策という観点ではICチップ読取が有力な選択肢である。
また、デジタル的な証明手法や属性証明はマイナンバーカードだけに依存する概念ではない。
デジタル社会においては、本人確認書類の画像提出という発想から一歩進み、認証基盤そのものをどのように設計するかという議論が重要になっている。なりすまし対策と利便性、そして利用者の理解と信頼を両立させる認証基盤のあり方を考える必要がある。
関連資料集
社内情報共有・紹介について
個人情報保護法、プライバシーガバナンスに関する理解の促進を目的として情報発信を行っています。
本記事および動画が参考になりましたら、同様の課題や関心を持つ方へご共有いただけますと幸いです。
YouTube動画、水町雅子ブログおよび水町雅子Webサイトは、著作権法の範囲内での、社内研修・勉強会・研究活動・社内情報共有(社内チャット・社内ポータル)・SNS等での紹介を歓迎しています(出典表示をお願いします)。なお、著作権を放棄するものでも、引用の範囲を超える利用を許諾するものでもありません。
執筆者プロフィール
弁護士 水町雅子(第二東京弁護士会、宮内・水町IT法律事務所所属)
現在、法人様向けのご相談のみお受けしております。
個人の方からのご相談には対応しておりませんので、ご了承ください。
SE(ITシステム開発)、コンサルティング等をシンクタンクにて行った後、弁護士登録。内閣官房・特定個人情報保護委員会にてマイナンバーの制度設計、ガイドライン作成、PIA制度化等を行う。
個人情報・ITに関して、首相官邸パーソナルデータに関する検討会参考人、内閣府「マイナンバーの利活用拡大のための検討タスクフォース」委員、こども家庭庁「こどもデータ連携の取組に関する検討会」委員、厚生労働省ITシステム等技術審査委員、東京都東京デジタルサービス会議構成員、東京都足立区情報公開・個人情報保護審議会委員、つくば市プライバシー影響評価制度検討懇話会委員、総務省・経産省・AMED実証事業等の支援等、実績豊富。
マイナンバー、個人情報、AI、医療情報、IT法務、企業法務、行政法務等に対応。書籍・論文執筆・講演のほか、日本経済新聞、朝日新聞、読売新聞、雑誌、TV等メディアコメント多数。
詳細な略歴はこちら。
